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会報 「みどりの風」
会報「みどりの風」No.10
会報 みどりの風 発行
第10号より下記8項を掲載しました

環境共学
昨今の異常気象と日環工の正念場
四国の自然災害と防災
集中豪雨と斜面崩壊
リサイクルと会計検査
思い出の記”太陽の塔”吹付工事(U)
アバタはエクボではない
南北九州・中国・四国支部合同技術者研修会
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集中豪雨と斜面崩壊
西日本工業大学 名誉教授、 (社)日本地すべり学会 九州支部 支部長 玉田 文吾
1.まえがき
 特別な構造の地層を切土した場合を除いて、斜面崩壊は、降雨と地震(多くは震度5以上)の誘因が働かない限り発生しない。降雨の場合でも、単に100mm/hの集中豪雨だけでは崩壊は起こらず、この種の集中豪雨では、急傾斜面では地表面の激しい浸食による土砂の流出によって、道路の一部を塞ぐ程度のものになる。降雨によって斜面崩壊が発生するためには、降雨量以外に「雨の降り方」が問題になる。本文では、降雨量を含む雨の降り方を「崩壊降雨パターン」と呼称して、これと崩壊との関係を考察したものである。
2.斜面崩壊の種類
 斜面崩壊にはおおくの形態があり、これによる分類もあるが統一された定義はない。本文ではすべり面の深度を基準とし、すべり面深度が1m未満のものを「崖崩れ」、すべり面深度3m未満のもの「表層崩壊」とし、すべり面深度が3m以上のものを「地すべり」とする。当然滑動面積も崖崩れ、表層崩壊、地すべりの順序で大きくなるが、滑動面積に定量的な規定はない。斜面の傾斜は地すべり、表層崩壊、崖崩れの順序で大きくなる。本文では主として表層崩壊を対象に検討する。
3.表層崩壊の地層構造
 斜面崩壊には素因と誘因とが必要である。いくら斜面が崩壊降雨パターン(以下本文では単に降雨パターンと表記する)を誘因として受けても、斜面内に素因がなければ崩壊は起こらない。表層崩壊の場合、素因となる地層構造は図−1に示したような地層中の「弱面帯」の存在であり、下記の特徴がある。

(1) 地表面が崩積土、その下位が強風化層または風化層(地層の種類には関係ない)の二層構造になっている。両者の層界面(不整合面)の傾斜の多くは30°内外である。層界面は、上位の崩積土が堆積したときに厚さ10mm程度の粘性土が生成されたり、擦過作用による平滑面が形成されたりして、弱面帯が形成されている。

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(2) 上位の崩積土は、礫、砂質土が不規則に混じっており、降雨が浸透しやすい地層構造をしている。下位の風化層は不透水層であるため、降雨パターンによって崩積土には地表面からの浸透水が一時的に地下水として貯留される構造である。
4.表層崩壊の発生機構
 表層崩壊は、素因となる弱面帯が全面的にせん断破壊して、すべり面に転化することで発生する。転化の原因となるものが誘因に他ならない。降雨量が誘因とすれば、表層崩壊の発生機構は次のようになる。

(1) 降雨によって上位の崩積土が飽和状態になると崩積土の重量が大きくなる。例えば不飽和状態の単位体積重量を18kN/m3とすると、飽和状態の単位体積重量は20kN/m3になるので、弱面帯の傾斜θ、深度をhとしたとき、単位長さと単位奥行幅当りのせん断応力増加凾vは、

     凾v=(20−18)h・sinθ・cosθ

になって弱面帯の全面的なせん断破壊を促進する要因になる。

(2) 崩積土の飽和状態に伴って弱面帯には、これの上部に貯留されている自由地下水の水深に等しい間隙水圧が作用する。これによって弱面帯の有効応力は、間隙水圧に反比例して低下するので弱面帯のせん断強度が低下し、弱面帯の全面的なせん断破壊が加速される。この効果は上記(1)の条件よりも影響が大きい。

(3) 上記の弱面帯におけるせん断応力増加およびせん断強度の低下は、図−2のように弱面帯の先端部が解放地形でなければならない。弱面帯の先端部は受働域と言われているが、斜面崩壊は受働域がせん断破壊しない限り発生しない。切土工事によって受働域を消失させると斜面崩壊が発生し易くなるのはこのような理由による。

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5.有効先行降雨量
 斜面上の降雨量は、蒸発、流出、浸透各量になる。斜面の地表面は普通不飽和状態になっているため、図−3のように毛管浸透によって湿潤面が下降する。土の不飽和部分には間隙中に空気があり、湿潤面が崩積土内を下降するには間隙空気を排除しながら浸透するので常時浸透圧が必要で、これには連続した降雨量が要る。湿潤面が連続して下降するための連続降雨量を「有効先行降雨量」と呼称する。北九州市内での観測では、有効先行降雨量には下記の条件が必要である。

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(1) 10mm/d以上の降雨量が継続するとき、累計降雨量を有効先行降雨量QEPという。この理由は紙面の関係で省略するが、降雨が24時間以上中断すると、それまでの累計降雨量に比例して浸透水が逸散し、有効先行降雨量が減少するためである。

(2) 崩積土の平均含水比は20%、また平均飽和度は75%程度であるが、このとき不飽和土の体積1m3中には空気間隙体積が0.1m3存在する。ここで降雨量が全部浸透すると仮定すると、理論的にはQEP>100mm(=0.1m3に相当する)によって湿潤面は最大1mは下降することになる。弱面帯までの平均深度をDP(m)とすれば、4.(1)(2)に示した崩積土が飽和状態になるための、有効先行降雨量QEP(mm)は、

     QEP=100・D・・・・・・・・・(1)

が飽和に必要な最低量になる。例えばDP=3mの位置に弱面帯が存在するときには、

     QEP=100・3=300mm

の有効先行降雨量によって崩積土がほぼ飽和状態になる。このために弱面帯の深度が浅い崖崩れでは、100〜200mmの有効先行降雨量で発生することがある。
6.降雨パターン
 斜面を被覆する崩積土が、4.(1)(2)で述べたように飽和状態になることが表層崩壊の条件である。この状態になる有効先行降雨量および雨の降り方を降雨パターンというが、これが表層崩壊の直接の誘因になるには下記の事項がある。

(1) 式(1)は、崩積土の透水係数が1×10−2cm/s程度の透水性の良い平坦地の場合であり降雨の大部分が浸透するときである。ここで傾斜、地形、崩積土の透水係数等の条件を加味したとき、DPが飽和に必要な有効先行降雨量は、

     QEP=α・β・100・DP・secθ・f(k)・・・・・(2)

のようになる。それぞれの記号は、α;地表面の植生と地形によって決まる係数、斜面上に棚田、畑がある地形では0.9、山林1.0になる。β;DP部分の崩積土の飽和度に関する係数、平均飽和度が75%の時1.0、夏期の長期乾燥が続き平均飽和度が70%に低下したときには1.3になる地内がある。f(k);DP部分の崩積土の透水係数に関する係数、
k=1×10−2cm/sのとき1.2、k=1×10−3cm/sでは1.6、k=1×10−4cm/sのときには2.2程度になることが観測されている。k<1×10−5では直接の降雨浸透はなく、斜面崩壊は発生しない。この意味でモルタル吹き付工は降雨量には関係ない構造である。
 例えば、DP=3m、θ=30°、k=1×10−3cm/s、の植生斜面では

     QEP=1.0・1.0・100・3・1.15・1.6=552mm

の有効先行降雨量で崩積土が飽和状態になる。

(2) 有効先行降雨量が100mmを超えているとき、50〜100mm/hの集中豪雨は、湿潤面を急激に下降させる効果があるのでこれを「衝撃降雨量」という。これによってf(k)が1.0〜1.1に低下するので、(1)の例では、

     QEP=1.0・1.0・100・3・1.15・(1.0〜1.1)=345〜380mm

程度が降雨パターンとなる。

(3) 崩積土層が飽和状態になると弱面帯全体が即座にせん断破壊する訳ではない。せん断破壊にはクリープ破壊という特殊な機構がある(詳細は省略)。このため飽和状態が少なくとも24時間は継続する必要があり、有効先行降雨量以降において50mm以上の降雨量を「加積降雨量」といっている。以上述べたように雨の降り方は重要で、10mm/dが毎日1ケ月以上続いたとき、または長期乾燥状態後の単なる衝撃降雨量は、流出量が多く降雨パターンにはならない。
7.崩壊の前兆と降雨パターン反復
 崩積土の飽和状態は数日続くことはなく、1回の降雨パターンによって弱体帯の全域がクリープ破壊することはない。弱面帯のうちクリープ破壊条件が満たされた部分から破壊が進行する。このため表層崩壊が発生するには何度も降雨パターンを受ける必要があり、これを降雨パターンの反復作用という。この現象を要約すると次のようになる。

(1) 弱体帯が部分的にせよクリープ破壊すると破壊歪みがおこる。これが地表面に引張亀裂として現れる。破壊歪みは、

     εcr=1.5×10−3

程度であるから、破壊部分長10mに対して15mmの開口亀裂が形成される。弱体帯が降雨パターンによって破壊しているか否かは、この変状から推定可能である。降雨パターン毎に開口亀裂が拡大するときこれを「表層崩壊の前兆」と呼称する。

(2) 弱体帯が何回降雨パターンを受けると全域が破壊して表層崩壊が起こるのか、現段階では定量を決定することは出来ない。しかし表層崩壊の前兆があれば、何回目かの降雨パターンの際に崩壊する。一般に集中豪雨によって斜面が突然崩壊するような印象を与えるが、繰り返し降雨パターンを受け弱面帯が脆弱化しているためで、前兆がない地区では素因もなく何回降雨パターンを受けても崩壊が発生するものではない。

(3) 前兆地内では、降雨が降雨パターンになると予測される度に避難する必要がある。
 問題は以上述べた理由によって、しばしば避難が空振りになることである。しかし面倒でも避難(勧告)することは防災上重要である。ただし、前兆の進行が確実な地区では、排水対策等によって表層崩壊の予防対策は可能となっている。
8.あとがき
 集中豪雨を受ける毎に、斜面崩壊の報道が見聞きされる。このため我国の斜面は脆く容易に崩壊が発生する構造の印象を与える。確かにこのような面もあるが、斜面が突発的に崩壊することはなく、素因に対して誘因が繰り返されることで発生するもので、全自然斜面から見れば特異な斜面と言えるものである。
 本文は、集中豪雨と斜面崩壊の関係について、極力、理論式を抑えて記述したため内容に飛躍が見うけられる部分がある。しかし重要な下記の点に関してはご理解頂けるのではないかと思っている。

(1) 降雨と斜面崩壊の関係は比較的単純である。しかし降雨パターンは多様であり、斜面の地層構造は複雑である。両者を組合せると両者の関係を定量的に解明することには限界がある。特に崖崩れは、DPが1m程度のため式(2)によると、150mmの有効先行降雨量で崩壊することがあり、これに衝撃降雨量が加わると降雨パターンの反復作用によって発生する実証例も多い。今後、衝撃降雨量はしばしば発生する気象環境にある。発表される雨の降り方の予測情報には注意したい。

(2) 斜面が何度目の降雨パターンで崩壊するか、前兆の拡大があっても回数予測は困難である。しかし降雨パターン毎に危険度は増すので、空振り承知の早期避難は防災のポイントである。なお前兆は経験豊かな専門技術者の判定が必要である。
PROFILE
玉田文吾
工学博士、西日本工業大学名誉教授、西日本工業大学地盤研究所、(社)日本地すべり学会九州支部支部長、地すべり学会論文賞受賞、日本環境土木工業会顧問

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リサイクルと会計検査
NPO法人日本環境土木工業会 顧問、元会計検査院技術参事官 安藝 忠夫
1.地球温暖化に伴う異常気象は、世界各地でさまざまな形態に変えて発生しているが、今年、日本では連日40度近い猛暑が長期(約3ケ月)に渡り、さらに南太平洋の台風発生地での海水温度が低下せず、次々と大型の台風が日本に押寄せ、先日には10月下旬にもかかわらず超大型の台風23号が各地に被害を残していきました。
 この地球温暖化の原因は、人間の社会生活により引き起こしており、石炭・石油の化石燃料を燃やし、大量の森林を伐採して燃やすことにより大量の二酸化炭素(CO2)が発生し、地球全体を包み込み地表が温まっている。
 この事態のため、地球環境をどの様に扱っていくか、今後大きな問題となっており、その対策として資源の有効利用、環境負荷の低減により循環型社会を構築する資源のリサイクルを積極的に推進することが不可欠となってくる。

2.我々が関係している建設産業では、資源利用量の40%を建設資材として消費する一方で、産業廃棄物の最終処分量の30%を建設廃棄物として処理している。
 平成12年度の建設副産物実態調査によれば、建設廃棄物全体として再資化・縮減率は85%と向上しているものの、品目別に見るとアスファルト・コンクリート塊及びコンクリート塊の再資源率が95%を超える一方で建設発生木材、建設汚泥などのリサイクルが低迷している。
 この課題を解決するには、リサイクルの推進はもとより従来の施策を見直し抜本的に充実・強化するための新しい施策として、関連の法律である「循環型社会形成推進基本法」「建設工事に係わる資材の再資源化に関する法(建設リサイクル法)」「国などによる環境物品の調達推進に関する法(グリーン購入法)」「資源の有効な利用の促進に関する法」などが次々と制定公布されている。

3.我が国の社会経済は少子・高齢化の急速な進展、情報通信技術の革新と普及などにより大きく変容してきており、従来のシステムがこうした変化に適切に対応できないものとなってきており、その見直しや再構築が求められている。
また我が国の財政状況について見ると連年の公債発行により、平成15年度末でその残高が450兆円と累増し、公債償還に要する国債費が一般会計の20%を占める借金財政となっている。
 このことから国の財政を監督する会計検査院は「会計検査の基本方針」を決定し、「国民の関心の所在に注意を払いつつ、少子・高齢化の進度・経済のグローバル化、情報通信技術の革新とその普及など社会経済の動向や厳しい財政の現状を踏まえた検査を行うこと、正確性や合規性の観点からの不正不当な事態に対する検査はもとより、さらに経済性・効率性、特に有効性の観点から、制度そのものの存否も視野に入れて、事務・事業の業績の評価を指向した検査を行うこと」などを表明している。特に「ハード」から「ソフト」へ検査の領域を積極的に拡大し、検査の観点の多角化、検査手法の開発に力点を置いている。
 この結果、近年、建設工事における資源のリサイクルに関連した注目すべき検査報告が2件見受けられる。従来の会計検査では、事業で使用した資材について検査したところ、その資材よりも品質が同等または、それ以上で、しかも単価が安い資材を使うべきであったと言う指摘が一般的である。これは論理の根底として品質と価格をクリアしなければ指摘とはならないと言う絶対条件があった。
 しかし、このリサイクルに関係した指摘においては、資材単価は安いけれども品質では使用した資材より劣っていても資源のリサイクルの立場から再生品を使用すべきであったと言う、まさに検査領域の拡大解釈により絶対条件が変更された状況となっている。
 この2事例の概要については下記の通りである。

(1) 公園の安全柵に間伐材を使用
 農林水産省は農村公園の整備事業を実施する県市町村に多額の補助金を交付している。事業主体では、公園の遊歩道における転落防止用の安全柵として自然との調和や周囲の景観に配慮するため、木材に模した擬木柵(プラスチックやコンクリート製)や木柵を設置している。
 16府県47事業主体が12、13年度に公園に設置した擬木柵(延長21,500m)の資材費に係わる直接工事費(2億4000万円)について検査したところ、擬木柵を採用した理由としては、@木柵に比べ資材供給が安定していること。A腐食に強く耐久性があること。B資材費が経済的であることとなっていた。
 しかし、一方では農林水産省及び林野庁は、大量に発生する人工林の杉の間伐材の利用促進を図ることとして通知を発している。さらに林野庁では、12年度から「緊急間伐5ケ年対策」を実施し、間伐材の利用促進に取組んでいるところである。
 この間伐材の利用について調査したところ、次の状況となっていた。

@ 間伐材を丸棒に加工する施設が全国的に整備され、資材の安定的供給が可能であること。
A 近年、木材の耐朽性を確保する防腐加工技術が開発されており、コンクリートなどには劣るものの耐久性が20年程度の間伐材を供給できること
B m当りの資材単価は、擬木柵で10,000円〜13,400円、防腐加工の木柵で4,700円〜6,700円となっており、木柵のほうが経済的であること。

 以上により、安全柵の設置には、木材利用推進の方針を徹底し、環境保全のため間伐材を採用したとすれば、資材に係わる直接工事費を1億3000万円低減できた。

(2) 新幹線建設工事の工事用道路の砕石
 日本鉄道建設公団は、新幹線などの建設工事を実施しており、その一環として工事用道路の路盤材に多量の砕石を使用している。この砕石には原石を採取し破砕して製造する「新材砕石」とコンクリート構造物の解体で発生するコンクリート塊を破砕し、不純物を除去して製造する「再生砕石」がある。
 近年、資源の再生利用の重要性から、公団では再生材の利用については、次のように取り扱うこととしている。

@ 再生材の供給量、取引状況、価格及び品質並びに再資源化施設について事前調査を行う。
A 再生材使用の場合、施工業者に使用する材料、品質及び用途を明示する。
B 再生材は道路の路盤材、構造物の基礎材とする。

 しかし、13年度の工事のうち工事用道路の路盤材に砕石を使用している20工事(工事費総額554億3000万円、砕石量73,000m3)について調査したところ、市販の積算参考資料に再生砕石の記載がなかったため、関連の工事実施地区の周辺には再生砕石の製造施設がないとして、新材砕石のm3当り単価2,350円〜3,100円により砕石の材料費を2億1700万円と積算していた。
 しかし、再生砕石について調査したところ20工事の実施地区の市町村にはそれぞれ1箇所以上の再資源化施設があり、再生砕石の供給体制が整っていた。これら工事に再生砕石を使用するとして積算するとm3当りの単価は新材砕石に比べ300円〜1000円程度安価となっており、砕石の材料費は4500万円低減できた。

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思い出の記”太陽の塔”吹付け工事(U)
グリーンポケット協会 会長 高橋 富男
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 前記ショットクリートの実験及び考察に基づき、昭和44年8月に入り'太陽の塔'の模型実験がお祭り広場の仮設場で夏の陽が降り注ぐ日に行われた。
その目的は、
@ 腕部のショットクリートについて、その施工性を調査し、併せて適正な調合決定の資料を得る。
A 外装仕上げの施工を同時に行い、下地工法及び仕上げ材の選定資料を得る。
B 長期観察により亀裂発生状況を調査し、仕上げ工法の選定資料とする。
等であった。躯体骨組の模型として、円筒の直径が3m、長さが6mの鉄骨骨組を下地とし、型枠はベ二ア板による曲面型枠を取り付け、配筋(スラブ筋6φ−@10cm ,リブ筋9φ,13φ)を行い、ショットクリートはスラブ厚5cm±0.5cm、リブ巾12cmに吹付けるものであった。
 調合は良好な施工性と収縮防止を主体として決定されたもので、調合比;セメント:細骨材:粗骨材=1:4:1,水セメント比;45〜50%,の施工性の良好な範囲とし、CSA;セメントの内割11%とするものであった。
 模型実験の結果、目的@の腕部のショットクリートの施工性や調合は、従前の実験と合わせ特別な問題は無かった。そして、長期観察の乾燥収縮による影響も従前に実験した内容に準じたもので特別な問題は無かった。
 しかし、模型実験の目的@以外のAとBについて難問題が発生した。それは、円筒のショットクリートの表面に試験施工された外装仕上げの月面の・・・アバタ状に類似したモルタルに、日時の経過と共にヘアークラックが入り、日毎に割れ目の巾が広がってきたことである。
 この試験施工された外装仕上げは、国内でも有数の左官専門会社において、当時建築で使用されていた左官用モルタル吹付機で行われたが、この吹付機は富配合で水セメント比の高い流動性の品質のモルタルしか施工できず、ショットクリートと異質の調合条件のものであった。
 上記の外装仕上げのアバタ状のモルタルは、当時アメリカがアポロ計画に基づき、アポロ11号による人類初の月面歩行の時代的背景があり、デザインされたと聞いた。
 試験施工された外装仕上げの割れ目の現象に受注者のお祭り広場共同企業体では困惑し、これに替る外装仕上げが火急な問題となり、検討されていたと関係者から聞いた。
 そのような情況下に"太陽の塔"ショットクリート施工指針案が明示された。指針案で材料に関しての要項としては、セメントの防湿と貯蔵、飲用に適する清浄な混練水の使用、細骨材については山砂と花崗岩の砕砂を大量に含む川砂(粒形が悪く、雲母の含有)の使用禁止、粗骨材は丸形の多い粒形の良いもの、CSAの混入率はセメント重量の内割11%を原則とし、ショットクリートのワーカビリチーを増し、水量を減ずるための混和剤ポゾリスの使用等の内容であった。
 また、ショットコンクリートの調合に関しては試験結果に基づき、セメント:細骨材:粗骨材=1:4:1とし、水セメント比は45〜50%の範囲とし、施工性の悪くならない範囲で、なるべく低い値とする等の内容であった。
 そして、施工方式は当然のことながら実験の当初から採用されてきた、@水量の管理が正確にでき、A材料が均一に混錬でき、B吹付けに際して材料のはね返りが少なく、C作業環境が良い等の特徴をもった湿式工法と明記されていた。
指針案に基づいて作成して色褪せた施工計画書を紐解くと、まえがきの
『このたび、万国博記念建造物「太陽の塔」の構造体の一部、頂部と腕部をショットクリート  で施工するにあたり、「太陽の塔」の構造物を想定してショットクリートの諸性質、施工性などについて昨年7月より数回に亘り実験を行ってきた結果と工事現場の条件を考慮にいれ本工事の施工計画を立てる。』
から始まり、施工方式と施工機械及び機械組数(2組)、IB-MC吹付機の構造図、フローシート、管理組織表、実施工程表及びショットクリート施工要領等、10頁に亘り手書きで昭和44年9月23日付の青写真で纏められていた。
 そして、実施工程表に基づいて10月に入り施工体制の準備に入った。
 準備した吹付機は2連式の斬新なIB-MC吹付機(三和産業(株)製作)他1台と付属機器は北越AMR370ロータリーコンプレッサー等2組であった。
 因みにIB-MC吹付機は、岐阜県恵那郡付知町の道路法面で製作会社の現社長和田恵男氏自身がオペレータをされた試作第1号機でスクリュー型横2連(長さ×巾×高さ=3.2×1.57×1.97m,18 ?)のミキシングの良い機械であった。
 一方、ショットクリートの品質確保と、お祭り広場共同企業体から厳守を指示された11月末日の工期を守るためには、熟練と機動力のある施工班と工程を厳格に管理できる現場代理人を必要とし、それなりの施工体制を備えた。
特にノズルマンの技量は重要で、その選出と現場導入には頭を悩ませた。例えば、ノズルを持たせたら1級の腕前という候補にあげていた職人が、家庭の事情で大隈半島の内の浦町近くの交通不便な船間へ帰省したため、自宅へ断崖絶壁の海岸の私道を徒歩で訪問したり、優秀なノズルマンを指折り数えて遠くは東北の現場から参加させる準備に東奔西走した。
 振り返ってみると、昭和43年7月の朝霞作業所の実験から1年3ヶ月の長い道程を経て、施工計画書に基づいて本施工に着工することになる。

吹付機の搬入時には、シンボルゾーンにある約3万u(南北292m、東西108m、厚さ7.6m)の大屋根は豆細工のような構造で既にジャッキで持ち上げられ、"太陽の塔"の頂部の吹付け用型枠も順調に進捗し、われわれの出番を待っていた。
 機械をセットし施工基準に基づき厳格な立会いのもとに試験練りから工事は始まった。
 セメントは電化CSAセメント11%混入の膨張セメント20kgを袋詰したものが搬入され、正確な計量を必要とする神経を使わずに済んだ。
 骨材のうち細骨材は淀川産の最大寸法10ルの川砂で粗粒率2.3〜3.8の標準粒度のもの、また、粗骨材は細骨材と同様の淀川産の最大寸法10ルの川砂で、5ル以上が大半の標準粒度のものを使用した。
 ワーカビリチーを増し、水量を減ずるための混和剤ポリゾスは、セメント量の0.2%のパリックに変更になった。
 従って、1バッチあたりの実施調合は下表の通りであった。

セメント CSA 骨材 パリック
川砂 豆砂利
9〜10kg 17.8kg 2.2kg 80kg 20kg 40cc
但し、骨材の状態は表乾とする

 斬くして、吹付け工事は10月下旬に入り頂部の下部から始まった。施工面の準備としてショットクリートの密度を確実にするために付着面の事前洗浄、付着を害する虞のある余分の水は、エアーブラストで吹きとばして除く作業から始めた。
 吹付け順序は先ずリブ面を施工し、次に表面吹付けを行う。ノズルは吹付面との距離を適当に調節し、原則として吹付面に直角に保つ。ただし、鉄筋付近を吹付ける時は施工面に近づけ、かつ角度も少々傾け鉄筋を完全に埋没するように施工した。はね返り骨材については除去係をつけて別途エアーにて併行して清掃した。特に型枠の隅部及び補強筋の裏側にはサンドポケットに形成しないように注意した。パイプ鉄骨のフランジとリブの上部は、はね返りの溜場となるので吹付けに先がけ同質のモルタルを詰め下端はそのまま吹付けた。また、打継面はテーパーをつけない突き合せ型とし、はね返り材料の除去を厳重に行い、仕上がり面のコントロールは釘とピアノ線で目標を作った。
 頂部(厚さ×面積×容量=7レ×1,003u×99m3)の吹付けは下部から足場の一段毎に上部へ向かって進められた。

 当時は現在のような便利な携帯電話は無くノズルマンとオペレーターの連絡は有線電話で行われた。毎日の吹付け面積は実施工程表(50u/d)通り順調良く進捗したが、上部に行くにつれ足場に積もったはね返り材を南京袋に詰め処理するのに、思わぬ時間と労力を費やし深夜に及ぶこともあった。それでも施工班の弛まぬ努力と協力のもとに工程を遵守し、11月上旬に頂部の吹付けを終えることができた。
 再び登ることができない地上65mの頂部の天辺に登り四方を見わたすと、甲子園球場が83個分もある広さ330万uの会場は高さ124mのエキスポタワーはじめ117の外国、国内のパビリオンが建築の粋をかたむけて、オープンに間に合わすべき工事を競い合っていた。
 次いで、両腕部(厚さ×面積×容量=5p×875u×81m3)の吹付け工事が始まった。両腕部の足場は頂部の吹付けに組まれた狭 な足場と違い、広いステージが組まれた狭隘な足場と違い、広いステージが組まれノズルマンも伸びやかに吹付け作業をすることができた。しかし、両腕を広げた建造物のため、重量のバランスを保つように、2台の機械で左右対称に腕の付根から先端に向かって吹付けたことと、頂部の厚みが7cmに対し5pと薄く許容誤差が0.5cmであったために、厚さ管理には相当な神経を使った。
 遡って、順調に頂部の躯体吹付け工事の最中、(10月末〜11月始め)8月に試験施工したアバタ状のモルタルの一部が肌割れする現象が起きてきた様相であった。
そのような状況下に、お祭り広場共同企業体から「創作者岡本太朗氏の意とする外装仕上げ工を、躯体と同品質の素材にてショットクリートで施工できないか」と打診があった。

 従来、われわれ法面施工業者は、吹付け面をできるだけ平滑に仕上げることに専念し努力してきたが、これと正反対の凹凸のある粗い面の仕上げの相談を受け一瞬戸惑った。と同時に竹中工務店から別途受注し、施工真只中のEC館(欧州共同館)の外壁吹付け工事のデザインが頭を過った。

(参考文献・引用文献)
・ショットクリート(嵩 英雄)
・ACI基準案
 ショットクリート施工指針(野尻 陽一・訳)
・ショットクリート施工要領(大浜 文彦)
・太陽の塔
 ショットクリート施工指針案
・万国博「太陽の塔」
 ショットクリート施工計画書
・万国博−カラーガイド−(毎日新聞社)

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アバタはエクボではない
NPO法人日本環境土木工業会顧問 佐藤 好宏
 この世の中で地球は唯ひとつ存在するものであり、この美しい地球を過去の祖先が行ってきたと同様に未来永劫に守って行く義務が我々にあると思います。
 ところが文明の発達が逆の現象、つまり地球を破壊に導く様な現象が地球のあちこちで起きている様に思われて仕方がないのです。
 現在毎年全世界で日本国土の約半分(188千q2)の森林が失われており、アマゾン流域だけで四国全土分の森林が消滅しています。それぞれ理由は異なるもののアマゾンでは原住民が燃料にするため伐採を繰り返し、植林をすることなく居住地をどんどん奥へと進めているのが現実です。
 しかし一方では、日本を始めとした主な先進国が中心となり失われつつある乾いた土地に積極的に植林を行い回復に努めているものの、なかなか追いつかないのが実態であります。
 森林が枯渇すれば酸素の供給源が減り、大気中の汚染物質を浄化する作用も少なくなる訳です。
世界の森林が枯渇して行く一方で、文明の発達に伴う人工的な汚染物質が大気中に大量に放出され、オゾン層の破壊、砂漠化につながる大問題に発展しているのです。
 ご存知の通り、オゾン層は大気圏外から入る紫外線の量をおさえ、人体に出来るだけ悪い(皮膚がん等)影響を与えない仕組みになっているのですが、所が既に地球一部(南半球等)ではオゾン層が破壊され皮膚がん等の発生が顕著に出ているところがあります。
 この問題はWHOが中心となってCO2の量を減らそうと運動が盛り上がり、京都議定書等が決議されましたが、世界的には一部工業国等の反対があり足並みが揃っていないのが実態であります。
 ところで「デイ・アフターツゥモロー」と言う映画が上映されました。これは世界の温暖化現象によって北極の氷がとけ、それが原因となって、アメリカのニューヨークが氷と雪に閉ざされてしまうと言うストーリーです。一般的に考えれば温暖化現象で何故気温が下がるのだろうと言う疑問が湧き、この映画は荒唐無稽なものとして片付けてしまう所ですが、実はこれは現実に起こり得る事なのです。NPO法人環境文明21の会報2004年5月号で、加藤三郎先生は「温暖化が進むとこれらの地帯が寒冷化すると言う話は理解しにくいかもしれないが、次のようなシナリオが考えられている。すなわち、温暖化の加速化→グリーンランドなどの氷河や北大西洋の海氷の溶解進行→塩分濃度の低下と海水比重の低下→メキシコ湾流(暖流)の北部ヨーロッパへの流入阻害→これら高緯度地帯での寒冷化、間伐、土壌水分の低下、冬における強風などの気候変化→食料、水、エネルギー資源に重大なインパクトという流れになるとの事。温暖化に伴う北半球での寒冷化の可能性は科学者の間では随分前から議論されている。」と述べています。・・・
最近になってブッシュ政権下に於けるペンタゴンで上記のような変化が起こりうる可能性について国防ないしは安全保障の観点から検討されていると言う事からも、いよいよアメリカ(環境問題には消極的であった)も本腰を入れはじめたものと考えらます。
 日本に於いても今年の夏は暑い日が続き、多くの大きな台風が幾つも日本本土を襲っており色んな被害をもたらしています。又、アメリカ、キューバ等でもハリケーンが多数発生し、死者もかなり出る等、人類生活に多大な被害をもたらしています。この事からも既に環境破壊はかなり進んでいるものと思われます。日本の国立環境研究所の発表によると、2100年あたりになると今年の猛暑は涼しいと感じる程に、なるだろうと発表されており、人類の住めない日本になってしまう危険すら潜んでいると言えましょう。こうなるとイラク問題どころではなくなります。如何にして日本の国土を守り、日本国民を安全に住まわせるか、直ぐにでも対策を検討しなければならない時期に来ていると思われる。
 こんな情況を知ってか知らずか、最近になって、ヨーロッパの自動車業界が中心となって2015年度を境にして、全ての自動車に於いて85%以上のリサイクル率を義務づける事を決めたのです。
 自動車は大体10年近くの使用が予測されますので、従って2015年から10年遡って2005年あたりから生産される自動車が対象となってくる訳です。イギリスのジャガー社等では100%のリサイクル化を表明しており、日本に於いてもトヨタ自動車等がそれに追従する動きがあり、環境汚染に対する認識度が高まってきております。
 一方日本に於ける環境問題を見るとアスベスト、グラスファイバーの使用等の規制はアメリカよりも徹底されておりません。自然に対する管理が甘く、例えば広島、福岡の山を見ると解りますが、かなりの数の松や杉の木が枯れたり、倒れている所が見受けられます。これは戦後一斉に同じ長さ、太さの木の苗木を植えたため、何10年かを経て、ほぼ同じ太さ、長さの松や杉が育ち根が浅いこともあって十数年前の強風によって共倒れ現象が起き、木が倒れ、枯れてしまいました。森林も人間社会と同じです。木も太いものがあり、短いもの、細いものとバランスのとれた状態でなければ全体として見たとき、弱い集団になってしまう訳です。日本の国土の80%以上が山や森林で占められております。本当に美しい素晴らしい国だと思うのですが、空から飛行機に乗って上空から見ますと、いたる所にモルタルをベッタリと貼った山や法面が見受けられます。誠に見苦しいヤケドの跡のようです。
 このような情況は他の国ではありません。このモルタルは戦後、山や丘を切り開くときに、安易に安価な方法としてモルタル工事を行ったためです。石原都知事も全く同じ事を言っております。数10年を経てこのモルタルは風化して隙間を水が通り抜けたり、崩落の危険すらある所が多数あります。
 本来、山や森林等は自然体であるべきです。ただ崩落や危険性のある所は、ハンチフレームのような型枠で仕上げ、形状を美しく仕上げ、その中に植物を植える等すべきであると考えます。ところが何とモルタル塗りの個所が全国で約3億uもあると言う説があります。
 早くこのモルタルを撤去し、美しい山や丘、道路に造り替えるべき時が来ていると思われます。

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南北九州・中国・四国支部合同技術者研修会
 平成16年10月18日(月)、19日(火)の両日「ホテルシーホーク」(福岡市)において南北九州・中国・四国支部合同の技術者研修会が開催された。イメージ
 第1日目は、第1部として西日本工業大学名誉教授・日本地すべり学会九州支部長の玉田文吾先生による「斜面崩壊の多様性と防止工法の適用性について」「集中豪雨と斜面崩壊」と言う演題で講演があり、最後に「NPO日環工は多くの優秀な法面専門の技術者を抱えておられる。将来は技術者の方々がプロジェクトをつくり、斜面崩壊のカルテを作成し、これを基に新工法を組合わせるソフトを作るように希望する。」と結ばれた。イメージ
 第2部は元会計検査院技術参事官の安藝忠夫先生による「公共工事と会計検査」と言う演題で会計検査の指摘事項などの事例の説明があった。又今年度から会計検査報告が数ヶ月早くなるために、会計検査自体も同じく数ヶ月早くなるとの事であった。
 第2日目は、NPO日環工の推奨工法の発表が各推奨工法を取られた会社よりあり、午前中で無事閉会した。
 なお、講演会のレジメをご希望の方は、本部事務局までお申し付け下されば、お送りいたします。

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